コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ②(テクノロジー・メディア・通信)
-将来にわたって武器になる専門性の確立-

以前のコラム(コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ①(製造業))では、コンサルティングファームの「インダストリー(業界)」チームのうち、製造業領域のチーム・サービス内容について触れていきました。
今回は、引き続き「インダストリー(業界)」チームの中の「TMT(テクノロジー・メディア・通信)」チームについて掘り下げていきたいと思います。

TMT(テクノロジー・メディア・通信)業界におけるサブセクターの概観
TMTインダストリー領域は、ハイテク業界、メディア・エンターテイメント業界、通信業界、という3つのサブインダストリー単位で組織編制をしているファームが多く、それぞれごとにメインプレーヤーと業界が直面している状況は異なっていますので、サブインダストリーごとに業界の特徴やプロジェクトテーマについて触れていきたいと思います。
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1. ハイテク業界(ソフトウェア、ハードウェア、半導体、プラットフォーマー等
【主要なプレーヤー】
ソニーグループ、日立製作所、パナソニック HD、富士通、NEC、NTTグループ、ルネサス エレクトロニクス、ソフトバンクグループ、三菱電機ほか
ハイテク業界は近年変化が非常に激しく、様々な変革や投資が最も盛んに行われている業界のひとつであり、コンサルティングファーム各社にとっても非常に重要で最大規模のクライアントセグメントになっています。
クラウドや生成AIなどのITソリューション・サービスを展開する企業に加え、半導体メーカーやデータセンターを展開する企業なども当該セグメントに含まれており、産業界全体に大きな変革を及ぼすEnablerとしても重要な役割を担っている企業が多数存在しています。
業界内で走っている取り組みとしては、大きく分けると、新規事業・ソリューション・サービス展開に向けたGTM(Go-To-Market)の取り組み領域と、自社オペレーショナルエクセレンスの高度化・抜本的変革の取り組み領域、の2つに分類でき、各企業のそれぞれの取り組みをリード・伴走・支援する形で、コンサルティングファームもサービス・プロジェクト展開を図っております。
(本コラムでは、注目を浴びている前者を中心に触れていきたいと思います)
前者の一例として、近年のハイテク業界は、単なるソフトウェアの進化を超え、現実世界(フィジカル)を書き換える「実装のディープフェーズ」に突入してきており、生成AIが適応される領域も工場のロボットなどのフィジカルへの黎明期を迎えていると感じています。
その中で、コンサルティングの役割も「戦略の提示」から「改革完遂へのコミットメント」へ、「システムの変革」から「製造現場などの物理的オペレーションの変革」へと変化してきていると見ています。
また、AIの活用余地の探索・拡大に向けて、従来型の戦略コンサルティング領域に留まらず、特許データや論文データを解析する知財調査ツールにまで踏み込み、技術目線でAIソリューションに関する競合他社の動向や優位性、提携先候補を検討することで、企業のR&D戦略や外部技術を取り込むオープンイノベーション戦略の策定を支援する動きも出てきています。
半導体業界も大きな変化を遂げており、世界半導体市場が1兆ドル規模に迫る中、業界構造も「垂直統合」へと進化を遂げており、コンサルティングとしても、M&A推進や半導体の供給網確保などを通じて、デバイスとAIを組み合わせた「特定領域のプラットフォーマー」への転換を目指す日本企業の変革を支援しています。
さらに、身近によく目にすることが増えてきた自動車業界における取り組みにおいても、「自動運転」「電動化」という文脈で、ハイテク企業との協業が盛んになってきているので、いくつかの事例に触れておきたいと思います。
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1. 「NTT×トヨタ」によるスマートシティプロジェクト
車から得られる膨大なデータをNTTの高速通信基盤で処理し(※一部後述のテレコムとしてのNTTと重複しますが)、渋滞解消や事故防止だけでなく、街全体のエネルギー最適化を行う「スマートシティ」の実現に向けた取り組みを実施
2.「Rivian(EVソフト・基盤)×フォルクスワーゲン(VW)」の技術提携
ドイツの巨頭VWが米国の新興EVメーカーRivianに巨額出資と技術提携を行い、伝統的な自動車メーカーが苦手とする「車の制御ソフトウェア」を、テック企業に近いルーツを持つRivianから取り入れる試み
3. 「Uber×BYD」による自動運転・ロボタクシー
ライドシェアのテック大手UberのプラットフォームにBYDのEVを10万台規模で導入し、ドライバーの電動化を支援。さらに、BYDの車両を用いた「ロボタクシー(無人タクシー)」の共同展開も視野に推進
上記以外にも、様々なテクノロジー活用の取り組みが加速しております。
・AI Factory(高速プロトタイピング):企業の業務オペレーションをAI前提で再構築するにあたり、数週間でAIツールを試作・導入するコンサル型事業
・量子コンピューティングの商用利用の拡大:ユースケース・ビジネス活用調査(創薬、材料開発、物流最適化など)
・医療ビッグデータ×AIによる重症化予防:自治体等と連携した、健診データに基づく糖尿病性腎症などの人工透析ハイリスク者の予測
・脱炭素トラッキング:サプライチェーン全体の二酸化炭素排出量をAIで自動算出・可視化するSaaS
上記のように、従来型のシステム開発ケイパビリティに留まらない、「複雑な物理的制約の中で、いかに先端テクノロジーを社会実装するか」という突破力が求められる局面も増えてきています。
ハイテク業界というと、Microsoft、Google、Amazon、Apple、Meta、NVIDIA、Teslaなどの外資系Big Tech企業に目が行きがちですが、日系企業においても、国内外を舞台に非常に多くの変革の取り組みが走っており、コンサルティングとしてもやりがいとチャレンジを感じていただける環境かと思います。
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2. メディア・エンターテイメント業界(放送、出版、映画、音楽、ゲーム、スポーツ、広告代理店等)
【主要なプレーヤー】
ソニーグループ、電通、リクルート、オリエンタルランド、サンリオ、セガサミー、バンダイナムコHD、KADOKAWA、集英社、東映アニメーション、DNP、NHK・民放各局、新聞社ほか
ハイテク業界とは異なり、メディア・エンターテイメント業界は既存事業が存続の危機を迎えている企業もあり、背水の陣でダイナミックな事業ポートフォリオ転換が求められている企業がある一方で、コンサルティングファームとしては、他のインダストリーと比較すると、しっかりと踏み込めているファームが少ないのも実態です。
特に国内においては、クリエイティブ要素が強い業界特性という点が、特に従来のコンサルティングアプローチの特性である論理性との噛み合わせが良くなかったという点も影響しているかと考えており、AIの台頭により徐々に変化の兆しが見えてきておりますが、この先まだまだ成長の余地が大きなインダストリーになります。
業界の様々な取り組みに対してコンサルティングファームが噛めていない領域も多分にありますが、メディア・エンタメ業界の経営・変革アジェンダとしては、ダイナミックな新規事業・収益モデルの再構築、および、DXを通じた既存オペレーションの改革が多数走っております。
【ダイナミックな新規事業・収益モデルの再構築】
新規プラットフォーマーの台頭など、既存ビジネス環境の急激な変化を受けて、新たなプラットフォームビジネスの新規展開、国内外企業への出資・買収、海外進出を加速させつつある状況で、一部事例について触れていきたいと思います。
・次世代動画配信参入戦略:日本テレビ(Hulu Japan)、テレビ朝日(ABEMAへの出資)
・M&A・PMI支援:KADOKAWA(海外出版社買収)、セガサミー(Rovio買収)
・海外市場進出(グローバル展開)支援:任天堂、カプコン、Netflix(日本発コンテンツのグローバル化)
・IP(知的財産)マルチユース戦略:バンダイナムコHD、集英社、東映アニメーション
・スポーツビジネスの収益最大化:楽天グループ(楽天イーグルス)、メルカリ(鹿島アントラーズ)
【DXを通じた既存オペレーションの改革】
上記のダイナミックな取り組みに加えて、特に営業・マーケティング・CRM領域においては、既存事業・サービスの改革・継続的高度化に向けたDXのフル活用プロジェクトも多数走り続けている状況です。
・サブスク解約率(Churn Rate)改善:スカパーJSAT、U-NEXT
・ダイナミックプライシングの導入:オリエンタルランド(ディズニーリゾート)、松竹(歌舞伎)
・SNS・インフルエンサー活用戦略:コーセー(美容メディア連携)
・オムニチャネル戦略:サンリオ(店舗とアプリの連携)、コナミ(eスポーツと連動)
・生成AI導入による制作プロセス効率化:サイバーエージェント、手塚プロダクション(AI火の鳥プロジェクト等)
・データドリブン・マーケティング:リクルート、ぴあ
・アドテクノロジーの実装:電通、博報堂DYホールディングス
・AIを活用したパーソナライズ・レコメンデーション:視聴履歴や属性からユーザーの「次に見たい」を予測し、滞在時間を最大化するアルゴリズム実装
同業界は、BtoC領域など、日常生活の中で触れるサービスも数多く存在していることから、プロジェクトとしても身近に感じるテーマに触れられる可能性も高い領域になりますが、現時点のコンサルティング業界全般のトレンドとして、具体的なコンテンツの制作や改善に触れられる機会は限られているという実態もありますので、希望するサブインダストリーやテーマに応じて適するファーム・チームについては、是非具体的なご相談をいただければと思います。
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3. 通信業界(通信キャリア、インフラ、固定通信、MVNO等)
【主要なプレーヤー】
NTTグループ(NTT、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、J:COM、ソニーネットワークコミュニケーションズほか
通信業界は前述のハイテク業界同様、非常に激しい変化・成長を遂げているインダストリーになりますので、新規事業・サービスへの進出検討は非常に旺盛なニーズが存在しているのと同時に、同業界の企業がテクノロジーをベースとした事業・サービスを手掛けることが多いため、そのソリューションを他の産業向けに展開するようなプロジェクトにおいては、システム開発のケイパビリティを活かせる局面も多く、ビジネスコンサルティングに加えて、ITコンサルティングやSIer出身の方々も数多く活躍しております。
最もダイナミックなタイプのアジェンダとしては、通信キャリアから脱却してデータセンターや半導体、AI領域にビジネスドメインを広げていく取り組みが推進されています。
例えば、ソフトバンクグループ(SBG)の近年の買収・出資動向は、単なる投資から「人工知能(AI)を中心とした事業集団」への変革を目指した、極めて巨額かつ戦略的なものにシフトしており、特に2024年から2025年にかけては、AIモデルの開発だけでなく、それを支える「半導体」と「データセンター(インフラ)」を自社グループに取り込む動きが顕著になってきており、「通信とハイテクの業界融合」が起きていると捉えています。
更に、業界の垣根を超えた取り組みとして、ネットワークスライシング(1つの物理的なネットワークを仮想的に分割・スライスし、用途や産業ごとに最適な「専用通信」を提供する技術)というキーワードで、いわゆる「土管ビジネスからの脱却」に向けた下記のようなB2Bソリューションのプロジェクトにおいて、要件定義やサービスレベルの検討、ビジネスモデル策定(従量課金などのプライシング戦略)、実証実験(PoC)を通じた実際の工場などの現場での最適な通信パフォーマンス確立と投資対効果(ROI)の算出などにも関わることが可能な業界になります。
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1. 製造業(スマートファクトリー)
工場内の「超低遅延」が求められる産業用ロボットと、「多数同時接続」が必要な数千個のIoTセンサーからデータを収集する形で柔軟な生産ラインの構築
2. 医療(遠隔医療・救急搬送)
走行中の救急車から高精細な4K映像を病院へ伝送。医師がリアルタイムで診断指示を出すなど、移動中でも安定した高度医療を提供する仕組みの構築
3. 公共安全(スマートシティ・イベント)
災害時や大規模イベントにて、一般ユーザーのスマホ利用が急増しても、社会インフラとしての通信機能を維持できる警察や消防の「専用レーン通信」の仕組み構築
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上記に加えて、通信キャリアによるエネルギー事業(新電力等)への参入支援や、データセンターのグリーン化・省エネ戦略(GX対応)など、ビジネスコンサルティングアジェンダ以外もございますが、既存事業・サービスのマーケティング・カスタマーエクスペリエンス領域でのDX推進の取り組みも根強く存在しています。
・AIを活用したチャーン(解約)予測モデルの構築と抑止策
・オンライン専用プラン(格安プラン)のLTV向上策
・店舗・オンライン・コールセンターのオムニチャネル統合推進
・生成AIを用いたカスタマーサポートの自動化・高度化
・顧客ロイヤリティプログラム(ポイント経済圏)の再設計
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TMTの各インダストリー(ハイテク、メディア・エンターテイメント、通信)は、古くは、
・ハイテク企業は、ハードウェア・端末を開発・提供し
・メディア・エンターテイメント企業は、コンテンツをクリエイトし
・通信業界は、回線を提供する
という棲み分けがなされていましたが、前述の通り、現在では相互に進出し合うことでシームレスに統合されたサービスを提供する形になっており、コンサルティングサイドからしても、サブインダストリー間での連携が求められるケースも多いことから、この3つのサブインダストリーチームを括る意味合いが一層強くなってきています。
TMT業界は、ダイナミックに変化を遂げている業界、かつ、他の業界のイノベーションのEnablerにもなるテクノロジーを展開しながら進化をリードしている業界であり、専門性を深めつつ世の中のイノベーションに関わっていける可能性の高いキャリア領域になります。
「デジタル」「ビジネス」のどちらの経験も活かせる業界ですので、コンサルティング経験者・未経験者問わず、是非チャレンジいただければと思います。
次回以降のコラムにおいても引き続き、各インダストリーの特徴について触れていきたいと思います。
当社はキャリア相談を通じて、「業界×テーマ」という点を常に念頭に置き、足元だけでなく将来にわたって強い専門性を身に着けていけるキャリア支援を実施することで、コンサルタントとしての専門性を高めたい/新たな領域のスキルを身に着けたいと考える方に加えて、新たにコンサルティングの門をたたく皆さまも全力で応援させていただいておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。