「ビジネスモデル変化の大きなうねり」 – 成果報酬・サブスクへのシフト –
当社はコンサルティング業界をメインに展開するエージェントとして、様々なファーム・チームの採用のご支援、および、その前提となる各チームのサービスの最近の動向や、それだけではなくコンサルファームにとってのクライアント先である様々な業界の事業会社の業界動向についてキャッチアップをしてきておりますが、この数年、コンサル業界の中でも、人月単位でのプロジェクト推進だけではなく、成果報酬型のプロジェクト形態のお話を耳にする機会が増えてきたと感じております。
そこで改めて、デジタルテクノロジーの急激な進展を受けて世の中のビジネスモデルも大きく変容してきたと感じており、各業界でのビジネスモデルの変遷、特に成果報酬型ビジネスへの転換や、サブスクリプションモデルの台頭について、簡単ではありますが整理をしてみたいと思います。
(海外にも目を向けてみると、デジタル起点で業界全体のサービスが大きな変化を遂げてきているなと実感しております)
まず、イメージがつきやすいのは、マーケティング・広告業界でのソリューション領域かと思います。
代表的な例としては、下記領域のサービスについては、既に成果報酬型のサービスが根付いているマーケットになっております。
1. アフィリエイトマーケティング
→ 成果(購入・資料請求・会員登録など)に応じて報酬を支払う
2. リード獲得型広告(CPL:Cost Per Lead)
→ 見込み客の獲得件数に応じて広告費を支払う
3. 成果報酬型SEO対策
→ Google検索で上位表示を達成したキーワード数・期間に応じて報酬発生
4. 成果報酬型広告運用(例:リスティング)
→ CV(コンバージョン)数やCPA目標達成を基準に報酬を決定
上記に関連する領域として、特に「小売業界xEC」においても、比較的イメージがつきやすいかと思います。
5. D2Cブランドとインフルエンサー連携
→ 売上のX%を報酬として支払う(クーポンコード連携など)
また、不動産・住宅業界は古くから成果報酬型ビジネスが定着してきた業界になります。
6. 売買仲介業務(成功報酬制)
→ 売却・購入が成立した際のみ手数料(売却価格のX%)を受け取る
7. 空室改善コンサルティング
→ 入居率向上や家賃アップによる収益改善分から報酬発生
かくいう当社がビジネスを展開している人材業界においても、古くは採用人数に関わらず定額の報酬を継続的に支払う広告掲載型モデルが主流でしたが、最近では、大半の採用支援のビジネス取引が成果報酬型にシフトしている状況です。
8. 成果報酬型採用(RPO・紹介)
→ 採用が決定したタイミングで紹介料を支払う(採用年収のX%など)
9. 成果報酬型求人広告
→ 応募者の数・質・入社までを成果として報酬設定
ここからは、一般の方があまり触れることが少ない業界でも成果報酬型ビジネスが浸透していると感じる事例をご紹介できればと思います。
◆ コンサルティング業界
10. 価格戦略コンサルティング
・価格改善による売上・利益増の◯%を報酬とするパターンあり
11. HR・報酬制度系コンサルティング
・人事制度改善による生産性や離職率改善などをKPIにして成果に応じて対価を支払い
12. ヘルスケア/医療
・医薬品の“成果連動型価格制度”を導入(米国など)
・特定疾患薬で、治療効果が見られない場合は全額返金
13. 環境・サステナビリティ
・CO2削減支援 → 減少トン数に応じた報酬型支援サービスを展開
14. クラウド+ESG
・クラウド導入時に「温室効果ガス削減効果」を示し、成果ベースで契約
15. コスト削減コンサル→ 削減できたコスト額の一定比率を報酬とする(例:削減額のX%)
◆ IT・SaaS・開発業界
16. 成果報酬型アプリ開発
→ ダウンロード数・月間アクティブユーザー数などに連動して報酬
17. システム導入支援コンサル
→ 導入後の業務改善成果やROI達成率に応じて報酬が変動
18. 成果報酬型SaaS契約
→ クライアントの売上向上・コスト削減額に比例した月額課金
◆ 教育・研修業界
19. 成果報酬型法人研修
→ 受講後の定着率・スキルテスト改善度などによる報酬設計
20. 資格取得支援サービス
→ 合格した人数や合格率に基づく報酬制度
◆ 医療・ヘルスケア業界
21. バリュー・ベースド・メディスン(VBM)
→ 治療成果(例:再入院率低下)に応じて報酬が変動
22. 健康経営支援プログラム
→ 健康診断結果改善、メタボ率低下などの成果によって報酬を支払う
◆ スタートアップ・新規事業支援
23. レベニューシェア型業務提携
→ 売上の一部をシェアする契約。初期費用無料で成果時に報酬発生
24. PoC支援(実証実験型ビジネス)
→ 効果検証成功時に次フェーズ移行+報酬発生
当社がコンサルティング領域をメインに事業を展開していることもあり、実は、コンサルティング業界の中でも、一部のファームは、上記の23、24のモデルを採用し始めている事例も出てきております。
(国立大学が保有するIPを活用した新規事業創出支援において、事業進展に応じて報酬スキームを設定など)
また、民間以外でも、行政・公共領域においても “成果シフト” の動きも増えてきており、その象徴として、ソーシャルインパクトボンド(SIB)は、社会課題解決の成果(例:再犯率低下)に応じて報酬を支払う官民連携スキームで、新しいファンディング形態として徐々に導入が進んできております。
これらのビジネスモデル変遷の背景として、競合との差別化や付加価値向上を目指す各社にとってデジタルテクノロジーの取り込みは不可欠な時代になっており、小売業界でのO2Oシフトや、メディア・出版業界での電子化へのシフト(海外ではニューヨークタイムズがデジタル購読モデルへ転換し黒字化を実現した事例も)、金融業界でも、福岡フィナンシャルホールディングスの「みんなの銀行(デジタルバンク)」や、完全デジタル型銀行の住信SBIネット銀行など、窓口や来店不要のアプリ完結型銀行が当たり前になりつつあります。
製造業でも、「モノ売り→コト売り・サブスク」シフトも進展しており、「機械販売→サービス課金型」への事例として、GEの飛行機エンジンの時間単位での稼働率ベースでのサービス提供(Power by the Hour)や、国内ではマキタ(電動工具)におけるリース・保守・工具管理を含む「一括サポート」サービスの提供、ダイキン工業(空調機器)における空間の快適性・省エネ保証(IoTで稼働状況を分析しエネルギー最適化サービスを提供)など、企業が直面するビジネス環境が複雑化するとともに、デジタルテクノロジーの活用や、高い次元でのデータ利活用ケイパビリティを組織に具備することが求められる時代になってきており、企業の新規事業担当者や、コンサルティングファームの担当者からしても、求められる視野の広さと専門性の深さが、昔とは段違いに変わってきている状況です。
さらには、海外でのBtoBでのサブスクリプションモデルの中には、クラウドソリューションなどのソフトウェア(SaaS)系サービスだけではなく、海外フリーランスや社員を現地法人なしで雇用・給与支払いが可能なサービスを提供するDeel / Remote.com(グローバル人材の雇用・支払いを一括して提供)など、業界を問わず、様々なビジネスシーンで成果報酬モデル(Performance-Based Model)が採用されていることから、今後、日本でも同様の事例が増えてくるのではないかと想像しております。
個々の企業の成長戦略に加えて、「テクノロジーの進化」が世の中のビジネスモデルの変化を大きく助長している現代において、特に、ビジネスやオペレーションの企画を担当する立ち位置の方々(事業会社のマネジメント・企画部門、コンサルティングファーム、M&Aアドバイザリーファームなど)にとっては、解くべき “解” の難易度があがっている一方で、やりがいや専門性を身に着けるチャンスでもあるかと思いますので、そのようなキャリアをご希望される方は是非、業界・年齢を問わず、当社メンバーにご相談をいただければと思っております。