【コンサルティングファームの給与水準】
– コンサル未経験の方が気になるコンサル業界の待遇面のあれこれ –
コンサルティング業界は基本的に職位に応じて大体の給与テーブルが決まっていて、個社ごとに職位の階層の数に関しては各社違いがあるものの基本的に管理職未満で2-3階層、管理職以降で3-4階層ほどの職位が存在します。
実際の給与は評価や業績に準じた賞与、残業代、出張などの各種手当といった要素で変動することがあるものの、オファーの際は職位ごとの給与テーブルに沿った形で「ベース月給」+「平均的な残業代」+「平均的な賞与額」を合算したものを年収として提示されるケースが多くなっています。
コンサルティング業界は高給というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実情として他業種と比較しても給与水準の高い業界と言えるのではないでしょうか。
例えば、社会人の1つの到達点としてイメージされることの多い年収1,000万円に関してもコンサルティング業界では管理職未満の職位で越えることが現実的に可能となっています。
もちろん管理職以降の職位ではそれ以上の高水準となっており、最上位付近の職位では数千万円の年収水準になってきます。
例えば、年収2,000万円というごく一部の社会人しか届かない年収水準に関しても、最上位の職位でなくともコンサルティングファームの管理職であれば十分に到達可能です。
年収水準に関しては当然個社ごとに違いはあるものの、中堅規模のコンサルティングファームやブティック系や新興系と呼ばれるような会社規模が比較的小さいコンサルティングファーム、創業して日が浅いファームに関しても業界最大手群にマッピングされるような大型のコンサルティングファームに劣らない給与水準を持つ企業も多く業界全体として高待遇と言える状況です。
実際に当社で転職支援を行い業界未経験でコンサルティングファームへ直近入社された方の中には、コンサルティング業務に親和性のある業務経験をお持ちだったことから年収1,000万円を越えるオファーを貰った方もいらっしゃいます。その他にも1,000万円には届かずとも700-800万円前後の日本の正社員の平均年収を大きく越えるオファーを貰った方が数多くいらっしゃいます。
「管理職未満で1,000万、管理職以降で2,000万円を目指せるといっても、成績や評価の良い年だけじゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、毎年の賞与に関しては評価で変動するケースはあるものの、基本的にインセンティブ等変動しやすい要素で年収を上げていく業界ではないため、1度到達した給与水準から大きく下がることはほぼありません。
また、管理職というと狭き門のようなイメージを持たれる方もいるかもしれません。令和5年賃金構造基本統計調査※によると、規模10人以上の企業に属する正社員のうち役職者(係長級・課長級・部長級)の割合は約18.6%となっており、約5人に1人しか役職者がいないという数字が出ているため現実として日本の一般的な企業構造では管理職は狭き門と言えるかと思います。
一方でコンサルティング業界に関してはそういった環境ではありません。具体的な数値を開示しているコンサルティングファームは少ないため体感値にはなりますが前述の18.6%の倍近い水準が管理職という企業が多いのではないかと思います。中には在籍者の半数が管理職というチームも少なくありません。
コンサルティング業界の昇進速度に関しては年功序列の側面が強い企業と比較するとスピード感があるのが特徴で、3-5年ほどで次の職位へ昇進するケースが多いです。(中途入社者の方に関しては入社時の職位によってはこの年数より早く昇進するケースも多いです)
評価に応じてそれ以上の早さでの昇進が可能であるのも特徴の1つであり、また、新卒や第二新卒などキャリアの早期からコンサルティングファームで活躍している場合、20代のうちに管理職に昇進することも珍しくありません。
※出展:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口(役職:第1表)
【賞与について】
コンサルティング業界は年1-2回支給される賞与制度を設けている企業が多く、複数種類の賞与を設けているコンサルティングファームも少なくありません。
支給状況に関しても業界全体として2025年現在ビジネスは活況で、近年の各社の支給実績を見ても他業種と比較しても安定して賞与の支給は行われていると言えるでしょう。
一方で、賞与制度に関しては個社ごとでの違いが大きくなっています。
具体的には支給タイミング、金額水準、賞与支給対象となる従業員割合といった点で、この辺りの違いをしっかりと理解していないまま入社すると捕らぬ狸の皮算用となってしまうことも起こりえますので、転職の際はご自身の目指すコンサルティングファームではどういった制度運用がなされているかも把握することが大切です。
また、中途入社の方に対しても初年度から賞与を支給するコンサルティングファームがほとんどですが、入社タイミングによって賞与の金額が期間按分されるケースがあります。
例えば、年1回の賞与支給、評価期間が1-12月というサイクルというコンサルティングファームであれば、1月に入社すれば100%の金額が支給されますが、7月入社であれば評価期間が1月入社に比べ半分になるため期間按分され50%の金額になります。
入社タイミングによってこういったケースがあるということも頭に入れておくといいでしょう。
【サインオンボーナス、入社準備金】
賞与とは別で、中途入社者に対しサインオンボーナスや入社準備金といった、入社翌月など入社後早期タイミングで支給されるボーナスをオファー時に付与されるケースもあります。
こちらは単純に気持ちよく入社受諾してもらうため、競合企業のオファーよりも総合的に良い金額を提示するため、希望年収とオファー年収の釣り合いを取るためなど様々なケースで付与されます。
【残業代について】
先ほど、コンサルへの転職の際は「ベース月給」+「平均的な残業代」+「平均的な賞与額」を合算したものを年収として提示されると記載しましたが、残業代の支給に関しても個社ごとに制度が異なるケースが多いため注意が必要です。
1日あたりの規定就業時間を越えた分が残業代として支給されるケースが一般的にイメージしやすいものかと思いますが、コンサルティング業界ではみなし残業の制度を採用している企業も多くなっています。
みなし残業の時間に関しては個社ごとに違いますが30-50時間ほどで設定しているコンサルティングファームが多く、みなし残業制度を採用している企業ではみなし残業時間分の残業代はオファーの際に提示されるベース年収に組み込まれています。
もちろん、みなし残業時間を超過した分の残業代に関しては別途支給されますが、例えば、みなし残業時間30時間のコンサルティングファームで平均残業時間は20時間という説明があった場合、基本的に追加の残業代はつかないと考えた方が良いでしょう。
また、残業代に関しては基本的に管理職未満のみに支給され、管理職以降は支給されないケースがほとんどです。
とはいえ、管理職となればベース月給の昇給も大きく、加えて管理監督者手当がつきその金額も残業代と代替するに十分な水準であるコンサルティングファームが多いため、残業代で稼いでいたため昇進したら損した気がする…ということは基本的にはありません。
また、裁量労働制をとっているコンサルティングファームでは管理職未満でも残業代は基本的に支給されません。
「残業代を貰えるのは嬉しいけれど、実際の労働時間が気になる」という方もいらっしゃると思いますが、激務のイメージが強かったコンサルティング業界も労働環境の整備が非常に進んでいます。
(詳しくは以前のコラム『働き方から見たコンサルティングキャリアの今』をご覧いただければと思います)
【福利厚生について】
家賃補助や寮制度、借り上げ住宅の提供といった福利厚生に関しては一部コンサルティングファームを除きコンサルティング業界には基本的に用意されていません。
そのため、住居に関する金銭的なメリットのある福利厚生を備える企業からコンサルティング業界へ転職される際は、そういった補助が受けられなくなることを念頭にいれながら希望年収を設定したほうが良いでしょう。
一方で、語学学習や資格取得に関する補助を設けているコンサルティングファームは増えており、個人取得するには費用が高額になるような資格に関してもチャレンジしやすい環境となっているため学習意欲の高い方には非常に魅力的な環境と言えるでしょう。
その他、直接的な金銭的な利益に繋がらなくても働く上でメリットのある福利厚生や休暇制度、働き方に関する制度なども近年のコンサルティング業界では増えてきています。
(休暇制度や働き方に関してより詳細な内容を知りたい方は以前のコラム『働き方から見たコンサルティングキャリアの今』をぜひご覧ください)
【未経験からのコンサル転職】
転職時の希望年収に関しては年齢やライフステージ、現職での年収などによって人それぞれ変わってくるでしょう。
とはいえ、可能な限り高い年収での転職を実現したいと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、コンサルティング業界への転職で高待遇を求めすぎると入社後に思わぬ落とし穴が待っていることもあります。
というのも先ほど述べさせていただいたようにコンサルティングファームは基本的に職位ごとの給与テーブルが決まっているため、高待遇を求めれば求めるほど高い職位での入社となり業務上の期待値も必然的に高くなります。
高い職位であればあるほどプロジェクト現場での主力としての役割を期待される可能性が高くなります。
また、その場合自分の下にメンバーがつくこともあり、自身の業務に加え配下メンバーの成果物レビューもタスクに組み込まれるため、コンサルティングファームの環境に慣れる前に疲弊してしまう、といったバッドケースも考えられます。
コンサルティング業界全体として業界未経験の方に対する研修やプロジェクトのアサインの仕方などの育成ノウハウに関して年々充実してきてはいるものの、実際に業界未経験でコンサルティングファームへ転職された方からは働き方や仕事の進め方へのアジャストに最初のうちは苦労したという声もよく聞きます。
もちろん現職での年収水準を大きく越えた年収水準でオファーを貰って入社され、その後順調に活躍されている方も数多くいらっしゃいます。
一方でコンサルティング業界は堅実に成果を出していれば順調に昇進・昇給していくことのできる環境ですので、急がば回れの考え方で、これまでのご自身の経験や知識をコンサルではどのように活かせそうか考え、無理のない範囲で活躍できそうな期待値で入社し地に足の着いたスタートを切ることが時には転職成功のカギになります。