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COLUMN

【転職マーケットにおける不思議な(?)ルール、その名も“オーナーシップ”】

“オーナーシップ”という言葉、転職をご希望されている方々(以下、「転職希望者」)には聞き馴染みの無い言葉かと思います。もっと言うと、ご存知である必要もない言葉かもしれません。
でも、今回は、その“オーナーシップ”について、敢えて触れてみたいと思います。

“オーナーシップ”についてお話しを始めさせていただく前に、まず、転職マーケットにおけるビジネススキームについて念のため説明させていただきます。
このビジネスを始めて11年半あまり、転職マーケットのビジネススキームをご理解されている転職希望者の方から「何だかお金をお支払いしないのが申し訳ない」とおっしゃっていただけたことは、ありがたいことに幾度もございますが、「お金はお支払いしなくていいのですか?」と質問を受けたことは両手で、ヘタしたら片手で足りるぐらいなので、おそらく、皆さま、こちらのビジネススキームはご理解されていらっしゃるかと思います。

図1のように、お金の流れだけハイライトしますと、当社のような転職エージェントは、転職希望者の方々に対する転職支援を経て、その転職希望者がご入社されたことを受け、求人企業から報酬を受け取ります。
また、その転職希望者の方と接点を持たせていただいたきっかけがテレビCM等でお馴染みのリクルートエージェント、doda、ビズリーチ等の転職メディアであった場合、求人企業から受け取った報酬の一部を当該転職メディアにお支払いすることでビジネススキームが完結します。
勿論、この後も、転職先でのご活躍状況等を確認させていただくといったフォローアップは続きます。

前置きが長くなってしまいましたが、このビジネススキームの中で、通称“オーナーシップ”という厄介なモノ(?)がクローズアップされることがままあり、ここからは、具体的なエピソードを紹介させていただくことで、その“オーナーシップ”の正体に近づいてみたいと思います。

エピソード1:転職エージェント間で“オーナーシップ”を主張するケース その1

おそらく、このパターンが一番多いかと思いますが、おひとりの転職希望者に対して、2つ以上の転職エージェントが“オーナーシップ”を主張するケースになります。
例えば、ある転職希望者の方が転職エージェントAの転職支援を受け、ある求人企業のαというポジションにアプライし、残念ながら書類選考で見送りになったとします。その1か月後に、その転職希望者の方が転職エージェントBと出会い、転職支援を受け、1か月前に書類選考で見送りになった同一求人企業のβという別のポジションを薦められ、アプライすることになったとしましょう。
その際、その求人企業から「転職エージェントAに“オーナーシップ”があるので、βというポジションへのアプライは受け付けられない」と転職エージェントBは告げられます。
現実的には、既に、その転職希望者の方が転職エージェントAとは疎遠になっているケースも多いのですが、その求人企業から転職エージェントBは、あわせて、「このまま進めたい場合は、転職希望者の方に、転職エージェントAに連絡の上、今後は、他のエージェント(=転職エージェントB)と進めること、および、うち(=その求人企業)にその旨の連絡があった旨、転職エージェントAから連絡するように依頼するようお伝えください」と伝えられます。
その結果、疎遠になっていたはずの転職エージェントAは、1か月前にその企業のαというポジションで見送りになった転職希望者の方が別のβというポジションでのアプライ意思があることを知り、「他のエージェントと進めるなんて許されない、うち(=転職エージェントA)にオーナーシップがあるはずだ!うちでβというポジションの選考を進めて欲しい」と主張し始めます。これが、“オーナーシップ”です。
個人的には、(後述もしますが)契約書に記載されているケースもございますが、転職希望者の方の預かり知らないところで、業界内のよく分からない曖昧な習慣により、その方のベストな転職活動を阻害することが最も避けなくてはいけないことなので、転職希望者の方が転職支援を受けたいと思う転職エージェントで進めるべきであって、何よりも転職希望者の方のご意見が尊重されるべきだと思うのです。
この場合、転職エージェントAの見立てが悪かったり、大手転職エージェントで起こりがちな、担当しているポジション以外のポジションへの転職を実現しても個人業績としてカウントされなかったりといった事情だったりで、この転職希望者の方にとってベストフィットなポジションがβであるにも関わらず、αを推してきたのだとしたら、やはり、転職エージェントBと一緒に転職活動を続けられて然るべきです。

エピソード2:転職エージェント間で“オーナーシップ”を主張するケース その2

エピソード1とほぼ同じシチュエーションなのですが、転職エージェントA経由でのαのポジションで選考が継続している中、転職エージェントBからβのポジションを薦められたケースです。
この場合も、流れはほぼ同じになるのですが、転職エージェントAによる転職支援中にβのポジションの存在を明かされておらず、「そんなポジションがあるなら、そっちが良かったぁー」と転職希望者が思われた場合、急ぎ、ポジションαでの選考を辞退の上、あらためてその後、ポジションβでアプライすることになります。ここでも当然、“オーナーシップ”が問題になります。

この場合、転職希望者の方が辞退理由を転職エージェントAにどう伝えるかにもよりますが、なかなか素直に応じてくれず、遅々としてβというポジションでの選考がスタート出来ないといったことが起こりえますし、そもそもミスマッチなポジションの場合、そうこうしているうちに、見送りの履歴だけがいたずらに残ってしまうという最悪なオチも考えられます。
この場合も、結局のところ、転職希望者の方がどのエージェントと一緒に転職活動を続けていかれたいかを最優先にすべき中、転職エージェント経由でのアプライの場合、基本的には、転職希望者と求人企業間で直接のやりとりが出来ないので、せめてその意思表示をポータルサイトのMy Page的な機能で出来れば解決するのではないかと思っています。

エピソード3:転職エージェント間で“オーナーシップ”を主張するケース その3

次は、エピソード1、エピソード2の派生バージョンといったものになります。
転職エージェントBからβのポジションを薦められ、そのまま一緒に準備をし、アプライしたところ、当該求人企業からエピソード1、エピソード2と同様、過去、または、現在進行形で、転職エージェントA経由でαのポジションにアプライ履歴があると告げられた中、ここからが派生バージョンたる所以なのですが、当該転職希望者の方にその自覚が全く無いケースです。
このケースは、転職エージェントAと当該転職希望者との間のミスコミュニケーションにより、転職エージェントAがフライング気味にアプライしていまっていたり、残念ながら業界内で散見されるのですが、明確なアプライ意思の確認無しに転職エージェントAが勝手にアプライしてしまったりといったことに起因します。
エピソード1、エピソード2と同様、転職希望者の方がどのエージェントと一緒に転職活動を続けていかれたいかを最優先にすべきなのは当然なのですが、このケースに関しては、それ以前の問題なので、転職希望者の方に、明確に転職エージェントに対するゴーサインを、「まだアプライはして欲しくない」、または、「正式にアプライして欲しい」といった形で実施いただくしかないと思っています。

エピソード4:求人企業が“オーナーシップ”を主張するケース その1

続いては、これまでの2つのエピソードと比して、起こる機会は極めて稀、もしくは、当社だけが経験した、ちょっと異常なエピソードかもしれません。
上述の図1で、転職メディアを介し、転職エージェントからのスカウトを受け、転職された場合のビジネススキームを紹介させていただきましたが、求人企業から転職メディアを介し、直接スカウト、いわゆるダイレクトスカウトを受けられた転職希望者の方も多数いらっしゃるかと思います。そして、そのダイレクトスカウトが超有名企業であったり、憧れていた企業であったりした場合、「一度は話しを聞いてみよう!」と思い、カジュアル面談等に進まれることも少なくないかと思います。
その際は、お話しだけは聞いたものの、何も起きず、しばらく時が経ったとします。
そして、ある時、いよいよ機が熟したということで、ある転職エージェント経由で、随分前に1回話しだけ聞いたことがある求人企業のあるポジションにアプライした際に、「この方はうち(=その求人企業)にオーナーシップがあるので、ダイレクトスカウトの形で選考を進めます」とその転職エージェントが求人企業に告げられます、そう、ここでも“オーナーシップ”が現れました。
当社が経験したケースでは、その求職希望者の方は当社による転職支援をご希望されていたのですが、その求人企業が頑なに“オーナーシップ”を譲らず、「本当に、その方は、御社経由でのアプライを望まれているのですか?」と何度も問いただされました。勿論、ご希望はされていたのですが、当社はコンサル業界出身者で構成されているエージェントなので、各ファームの現場のマネジメント層の方々と深くつながっていることもあり、その求人企業がその際、採用コストを圧縮しなくてはいけないご事情があることを存じていたので、おとなしく引き下がり、結局、求職希望者と求人企業の間に公式には入れないものの、求職希望者の方に対する、その求人企業のポジション等に関する情報提供やケース面接対策といった転職支援は非公式に続けさせていただき、その転職希望者は見事にオファーをゲットされました。
勿論、決して安くない採用コストはかかってしまいますが、しっかりとした準備さえすれば、オファーをゲット出来る、つまり、入社後もご活躍出来る可能性がある方も多数いらっしゃるので、転職エージェントを使った転職活動をする意味はあると信じていますし、そのあたりのことについても、“エージェントを使う理由”として、こちら( Agent Service(エージェントならではのサポート)|DCT – キャリアコンサルのプロフェッショナル )に記載していますので、ご一読ください。

エピソード5:求人企業が“オーナーシップ”を主張するケース その2

続いても、求人企業が“オーナーシップ”を主張されるケースなのですが、特に、転職希望者の方の預かり知らないところで、業界内のよく分からない曖昧な習慣により、その方のベストな転職活動を阻害される可能性があると痛感したケースです。
求人企業が“オーナーシップ”を主張するケースと分類しましたが、厳密には、転職メディアにより求人企業が“オーナーシップ”を主張させられるケースと言えるかもしれません。

当社が転職メディア経由でスカウトした転職希望者をある求人企業に紹介し、順調に選考プロセスが進みつつあったところ、その求人企業から「大変申し訳ないのだが、これ以上、進められなくなった」と連絡がありました。
ご事情を伺ったところ、その求人企業がある転職メディア経由でその転職希望者をダイレクトスカウトし、一度、カジュアル面談を実施していて、その転職メディアとの契約上、一定期間内は、他の如何なる経由でのアプライも受け付けてはならないといったものでした。

当該転職メディアを転職メディアAとすると、転職メディアAとしては、当該転職希望者の方が別の転職メディアB上で、ある転職エージェントにスカウトされ、そのまま入社されてしまうと、報酬は当該求人企業からその転職エージェントと転職メディアBに流れてしまうわけで、それを阻止したいのだと思います。「当該転職希望者が当該求人企業に転職意思があることはその転職エージェントからのアプライで分かったわけだから、ダイレクトスカウトの延長として選考プロセスを進めろ」といった感じでしょうか。
実は、今回当社が経験したケースでは、上記転職メディアAと転職メディアBは同一だったので、転職メディアAからすると、どっちにしても、一定の報酬は獲られたのですが・・・
そして、今回も、当社としては、そのまま当該転職希望者への転職支援を続け、見事にオファーをゲットされたのですが、エピソード3と異なるのは、当該求人企業がご事情を詳らかに明らかにしてくださったので、その求人企業との間で、当該転職希望者にはそのややこしい事情を明らかにせず、そのまま当社経由でのアプライ扱いで選考を進めることとし、最終的に、当社はその求人企業から報酬は獲ず、その求人企業は転職メディアAにダイレクトスカウトとしての報酬を支払った点です。

今回のいずれのケースでも、最も大切で、最も守られるべき求職希望者の預かり知らないところで、この転職マーケットの不思議なルール(?)である“オーナーシップ”を巡って、当社も含め、狂騒曲が鳴っているわけで、業界全体はいい方向に進むために何が出来るかを常に考え、例え小さなことでも、出来ることをやっていきたいと思っています。

最後に、当社が持つ求人企業との契約の中で、この“オーナーシップ”に相当する条文が含まれている契約書は全体の11.1%(当社雛形の契約書で締結した場合を除く)と少なく、また、その内容も曖昧な部分が多く、やはり、契約だけで縛るのは難しく、最終的には、転職希望者の方の意思の尊重、そして、その意思を適切に導くための正しい情報提供にかかってくるのではないかとあらためて思います。

当社は、求人企業に対しては、その求人内容、および、その背景等を確実に理解した上で、その求人企業が欲しい人材を紹介し続けることは勿論のこと、やはり、転職希望者ファーストでありたいと思っていますので、コンサル業界へのキャリアチェンジ、コンサル業界内でのキャリアアップ、転職業界からのご卒業といった当社の得意領域に関するご相談をいつでもお待ちしています。