コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション -番外編-
― 「インダストリー」の在り方に対する当社の迷い? ―
前回まで、「将来にわたって武器になる専門性の確立」として、「インダストリー」 × 「サービスライン」のマトリクス組織の紹介、さらには、「インダストリー編」として4つのインダストリーについて説明させていただきました。
【これまでの関連コラム】
コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション -将来にわたって武器になる専門性の確立-|DCT – キャリアコンサルのプロフェッショナル
コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ①(製造業)
コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ②(テクノロジー・メディア・通信)
コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ③(電力・ガス・エネルギー・素材・化学)
コンサルティングキャリアにおける専門性のバリエーション - インダストリー編 ④(建設・不動産)|DCT – キャリアコンサルのプロフェッショナル
今回は、「時代を経てもインダストリーサイドの“体制”としては大きな枠組みは変化していない」、「ただし、競争環境は変化し続けているため、インダストリーサイドが向き合うアジェンダは変化してきている」としてきた「インダストリー」の在り方について、当社がこの10数年で感じてきたこと、および、今後の向かうべき方向性について、全2回(予定)にわたって、少し踏み込んでみたいと思います。その今回は、1回目となります。
下記グラフは、当社が転職をサポートさせていただき入社された方々のうち、当社代表の橋本が直接サポートさせていただき、コンサルティングファームに転職された方の所属先のチームの「インダストリー」:「サービスライン」:「(第2新卒を含む)Pool制」の割合をグラフ化したものになります。

FY15は、なんと100%「インダストリー」所属の方の転職をサポートさせていただいていた中、「サービスライン」も徐々に増えてきて、FY19で逆転しています。
当社の事業年度は、10月が始期ですので、FY19と言いますと、2018/10~2019/9の期となり、思い起こすと、ちょうどこの時期(2019/4~2019/8)に、アクセンチュアのMD(当時)の方やBig4のパートナーの方と今後の「インダストリー」の在り方について酒席ではありますが議論をさせていただいた記憶が鮮明に残っており、当社としても、「インダストリー」の在り方、つまり、
・(これは未来永劫揺るぎないのですが)「インダストリー」がクライアントに果たす役割
・「インダストリー」のコンサルティングファーム内での位置づけ・役割
・「インダストリー」が持つべき専門性
・「インダストリー」で築けるコンサルタントとしてのキャリア
・10年後、30年後の「インダストリー」
に迷いが生じていたことが数字にも明確に表れています。
その酒席での議論でも、特に、“「インダストリー」が持つべき専門性“について、色々なアイデアが出たのですが、その後、程なくして、アクセンチュアから2020/1/15付(日本時間)で「アクセンチュア、今後の成長モデルとグローバル経営委員会メンバーの変更を発表」として、以下の通り、”お客様の業界ごとの事業単位ではなく“、”地理的単位で事業を管理していきます“、”一方で“、”業界ごとのアプローチは継続“といった表現で、業界ごとの事業単位からの移行が発表され、実態としては、「インダストリー」に所属するコンサルタントが極少化されました。
“アクセンチュアは、市場を牽引する機能として、ストラテジー&コンサルティング、インタラクティブ、テクノロジー、およびオペレーションズの4つのサービスに再編します。 またアクセンチュアは、これら4つのサービスをお客様の業界ごとの事業単位ではなく、北米、ヨーロッパ、および成長市場(日本を含むアジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区の総称)の3つの地理的単位で事業を管理していきます。一方で、アクセンチュアは業界ごとのアプローチは継続し、グローバルで業界に特化したサービスも拡大していきます。”
なお、極少化した上で、「インダストリー」に残ったコンサルタントは、各インダストリーとしてのビジネスの成長、および、そのためのアカウント(≒クライアント)の維持・拡大に注力していくことになり、それ以外のコンサルタントは、「サービスライン」に異動の上、引き続き、元のインダストリーのクライアントの案件に従事することになりました。

蛇足ですが、その後、「サービスライン」から「インダストリー」への揺れ戻しもあり、さらには、まだ、移行期としているようですが、アクセンチュアから2026/3/17付(日本時間)「アクセンチュア、リインベンション サービスを推進する新たな体制を発表」として、再び、組織再編が発表されています。
次に、こちらは明確なプレスリリースという形での組織再編ではないので実名は挙げられませんが、アクセンチュアが「インダストリー」に所属する人員を極少化する組織再編を実施したのとほぼ同時期に、あるコンサルティングファームは、「インダストリー」の細分化に踏み切りました。
この組織再編には、次世代リーダーの育成を目的とした若手パートナーの登用といった狙いもあったようにも思いますが、例えば、前年度まで製造業向けの「インダストリー」として、傘下に製造、自動車、エネルギーと3チームあった中、自動車OEM、部品メーカー、重工業、化学・素材、建設、住宅設備、産業機械、金属鉱業、公益・電力インフラ、エネルギーと10チームにその年度には細分化されました。
― 「インダストリー」が持つべき専門性の変化 ―
そして、この時期と言いますと、今や登録ユーザー数が7,400万人(2026年5月時点)に到達しているPayPayが2018年10月5日のサービス開始からわずか1年半足らずで登録者数が2,500万人を突破した時期であり、2010年4月1日の資金決済法の制定、および、急激なテクノロジーの進化により、金融機関が独占していた決済事業に参入してきていた異業種のプレゼンスが明らかに顕著になり、金融業界に限らず、あちらこちらで、異業種参入が“やってみる”といった程度に留まらず、既存のプレイヤーに“取って代わる”程の勢いになっていた時期でもありました。
上述の「インダストリー」に所属する人員を極少化したアクセンチュアと「インダストリー」傘下のチームを細分化した某コンサルティングファームの組織再編は、その方法や出来上がりの組織こそ全く異なりますが、「インダストリー」の在り方として、クライアントから求められる専門性の粒度がより細やかになったこと、および、その細やかな専門性を従来の業界のみならず、異業種として新規参入したい業界に対しても提供出来るようにポータブルな状態にしておくことを目的にしたように思います。
次回以降、そのクライアントから求められる「インダストリー」における専門性の粒度について、「インダストリー」に分類されるチームのひとつである金融業を題材に考えてみたいと思います。
コンサルタントとして備えておくべき専門性に迷われたり、クライアントから求められる「インダストリー」における専門性の粒度について、次回以降のコラムを待つことなく議論されたい場合は、いつでもご連絡ください。