DCT – キャリアコンサルのプロフェッショナル

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COLUMN

【働き方改革を経た近年のコンサルティング業界の概観】

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・残業平均15-30時間/月 ※ 複数の大手ファーム実績
・男性の育休取得率50%超(大半が90日前後を取得)
・プロジェクトの合間に1-2週間の休暇取得(3ヶ月から半年に一度)
・リモートワークと出社のハイブリッド勤務体制(週1-2日程度の出社が多数)
・将来にわたってフルリモート勤務を前提とする制度も一部導入済み
・転勤/異動なし(本人の希望による転勤/異動は可能)
・短日/短時間勤務
・有給休暇の拡大 ※ 最近では子供の運動会に有給が付与されるケースも出現
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時代の流れとともに、「ハードワーク」という代名詞であったコンサルティング業界も大きく変化を遂げてきています。

クライアントである大手企業の経営課題やオペレーション変革を常に手掛けるコンサルティングファームにおいては、一般の事業会社とは異なり「ルーチンワーク」というものがなく、常に「新しい取り組みにチャレンジする/何かを変える」という局面に向き合っています。
マーケット環境のリサーチや国内外での他社事例/類似事例の調査、顧客となる企業や消費者のニーズ/トレンドの把握、それらのファクトを織り込みながら仮設立案とそのブラッシュアップを繰り返していくことが多く、時には、先進事例が存在しないこともあり、故に、「調べる時間」「考える時間」「ディスカッションなどを通じて仮説や提案の精度をあげていく時間」「資料を作成する時間」が必要で、私自身もコンサル現役当時に経験していましたが、仕事内容のクオリティを高めるために、結果的に長時間労働になりがちだったのが2010年ごろまでの業界の状況でした。

業界全体的に、ビジネスとしては右肩成長を続けてきている活況の中で、人員確保に各ファームが頭を悩ます状況が続き、新卒・中途採用を積極的に拡大する一方で、既存の従業員であるコンサルタントのリテンション(いかにして長い間居続けて活躍してもらうか、産育休からいかにして復帰してもらうか)に関しても、各ファームが様々な取り組みを実施するようになってきました。
業界の中で有名なのが、最大手のコンサルティングファームであるアクセンチュアにおける「Project PRIDE」という取り組みです。
アクセンチュアでは、政府主導の働き方改革実現会議発足に先駆け、2015年1月より「Project PRIDE」という形で、下記の施策を通じて、社内のあらゆる働き方の改革をスタートさせました。

・生産性向上に繋がるツールやコツの提供
・管理業務効率化のチャットボット、プロジェクト概要登録の自動化RPAの開発
・生産性向上に長けた社員から学ぶ「時間の達人ショートVTRシリーズ」
・グローバル60万人超の社員の知見と事例が集積されたデータベースの活用促進
・ポータルサイト強化:目指す姿や好事例などPRIDEに関する情報の掲載
・全社員と遠隔でもコラボレーション可能なツールの徹底活用

上記に加え、「18時以降の会議の原則禁止」「短日・短時間制度の導入」「在宅勤務制度の全社展開」などを通じて、制度そのものの整備と、実際に制度を活用する事例を増やしていくことで、全ての社員というわけではないかと思いますが、多くの社員の意識を変えることに成功し、働き方が大きく変わりました。

前述の通り、コンサルティングという仕事は、クライアント企業の重要なプロジェクトに常に関わるため、「仕事のクオリティ」は絶対的に落とすことができない状況において働き方を改革していく必要がある中で、制度というハード面と、従業員の意識というソフト面の両面において、各ファームが着実に取り組みを実施してきた結果、働き方が大きく変わってきました。

近年のコンサルティングは、ひと昔前と比較しても、「価値の出し方」も変わってきており、ファクトとロジックを膨大な時間をかけて積み上げてブラッシュアップするのではなく、まず小さく実際に起ち上げてみてその中でPDCAを回して精度をあげていく、というアプローチも増えてきており、そのような価値の出し方の変化も、業界全体の働き方の変化に少なからず影響を与えてきています。

そして2020年からのコロナ禍を迎え、リモートワークを余儀なくされる中で、プロジェクトの進め方やプロジェクト現場での作業の仕方も更に変わり、もともと「効率重視」の考え方をする人が多い業界であったこともあり、「無駄な作業をしない/効率的にどう進めるか/最短で課題を解決するためには・・・」ということに向き合った結果、実は、どの業界よりも効率的な仕事ができる環境が整ったように感じています。

それを受けて、日々の働き方の改善だけでなく、中長期的な視点でのワークライフバランスの確保という点においても、非常に優れた業界になっています。
中長期的なワークライフバランスという点では、下記の制度は業界内でも一般的になっており、実際に活用してキャリアを歩んでいる方々も非常に多く存在しています。
また、私自身もコンサルティング時代に実践していましたが、プロジェクトの合間に1-2週間の休暇を取って国内外の旅行に家族で出かける、などといったスタイルを取っている方が多いのも特徴です。

・時短勤務(例:4時間/日)
・短日勤務(例:4日/週)
・短日短時間勤務(例:週4日、6時間/日)
・育児・介護に要する特定時間帯を業務から除外する勤務制度
・バック/ミドルオフィス業務との兼務(クライアント訪問しない前提での勤務)
・休暇付与の拡大(有給外でのプロジェクト間での数週間の休暇付与、子女結婚休暇、配偶者出産休  暇、子の看護休暇、傷病休暇、子供の運動会のための有給付与 等)

現在は、ポストコロナ禍を迎え、大半のファームが、リモートワークと出社の両方を維持しながら勤務する「ハイブリッド勤務体制」が主流となっています。
この「ハイブリッド勤務体制」の運用レベルは、ファームによって様々です。

・完全に各チーム/プロジェクトの現場に任されており、個々人の状況やプロジェクトシチュエーションによって柔軟に判断して運用しているケース
・全社方針として最低限の出社日数を決めたうえで(例:週2日は出社)、それ以外は各チーム/プロジェクトにて判断して運用しているケース

また、下記のような、ハイブリッドを超えた「完全フルリモート勤務」が可能なファーム/チームも出てきております。

・どうしても恒久的にリモート勤務を希望する社員に寄り添う形で、会社として公式に「完全フルリモート勤務」の職種/キャリアパスを作り、将来にわたり、フルリモート勤務が可能な環境を約束するパターン
・ハイブリッド勤務を基本方針としながらも、個々人の事情に応じて、例外的にフルリモート勤務を許可するパターン

完全フルリモート勤務制度を組み込んでいるのは、コンサルティングファームの中でも一定以上の規模を持つファームになりますが、そもそも、クライアントやプロジェクトによって、プロジェクト内容(テーマ)や業務内容が異なるため、働き方も柔軟に調整が可能というコンサルティングならではの側面もあります。

近年、東京以外にも事務所を開設して事業展開を図るファームも増え、関西・東海・九州をはじめ、北関東や中国地方などにも拠点を広げるケースも増えてきており、前述のハイブリッド勤務制度や、フルリモート勤務制度などと合わせて、コンサルティング業界は、「働く場所」と「時間の使い方」について、個々人のライフステージに合わせて、非常に柔軟に過ごしていける環境になっています。