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COLUMN

【ビジネスモデルの変遷で見る近年のコンサルティング業界の概観】

転職をご希望されている方々(以下、「転職希望者」)と面談をさせていただいていると、コンサル経験の有無に関わらず、特に若手の方から「『戦略コンサル』(時には、『戦コン』)に行きたいんです!」ですとか、「作ることが決まっているモノを作る立場から、『ITコンサル』に行って、何を作るか、どう作るかを決める立場になっていきたいんですよね」ですとか、「やっぱり、『総合コンサル』ですかね」といったご希望をお聞かせいただくことが少なくありません。

当然、そのようなご希望を叶えてさしあげるべく、全力でサポートさせていただくわけですが、例えば、『戦略』というキーワードだけに着目してみても、当コラム執筆時点で、アクセンチュアにも、ビジネスコンサルティング本部の中に『ストラテジーグループ』が存在しますし、PwCコンサルティングにも、Strategy Consultingという分類でStrategy&、X-VS(略称)、FDL(略称)といった3チームが存在します。また、日本発のファームであるアビームコンサルティングでも、2024年4月より組織を「戦略コンサルティング事業/ソリューションコンサルティング事業/アウトソーシング事業」へと再編され、Strategy Unitの中に6つのチームが存在します。

このように、『戦略コンサル』、『総合コンサル』、『ITコンサル』といった、長年、コンサル業界内のプレイヤーを分類するために使われてきた言葉や考えでは、昨今のコンサル業界の実態を表現するのは難しいのではないかと、ここ数年、いや、ここ10数年、考えております。

右の図1は、コンサル業界で扱うテーマ・案件を6つに分類したものになります。

分かりやすくするために少し稚拙な例となりますが、例えば、クライアントがビジネスを展開しているマーケットが飽和状態にあり、合従連衡も進み、シェア争いも硬直状態にあったとします。
そこで、クライアントから新規ビジネスの相談を受けたとすると、その案件は、図1では『戦略』に分類されます。
その案件を進め、何等かの新規ビジネスの方向性を立案すると、次に、クライアントからは、その新規ビジネスを、どのような組織体制で運営するか、販売チャネルはどうするのか、既存のカスタマーセンターの流用性はあるのか、そもそも業務そのものをどう回していくのかといった、より具体的な相談を持ち掛けられます。これらは、図1では『マネジメントコンサル/業務コンサル』に分類されます。併せて、テクノジーがないと何も出来ない、または、新規ビジネスそのものがテクノロジーに根差したビジネスであったりする昨今なので、クライアントから、その新規ビジネスを支えるテクノロジーは何を選択すべきか、業務とのバランスも考慮し、業務アプリケーションをどこまで作り込むべきかといった相談も受けることとなり、それらは、図1の『テクノロジーコンサル』に分類されます。
コンサル経験者の方は勿論のこと、多くの方が想像出来るかと思いますが、その後、『マネジメントコンサル/業務コンサル』と『テクノロジーコンサル』の検討結果を受け、『SI(=システム開発)』が始まり、無事、サービスインすると、構築したシステムの『システム運用・保守』へと進んでいきます。
最後のひとつの図1の『ビジネスプロセスアウトソーシング』についてですが、『マネジメントコンサル/業務コンサル』の一環で、既存のカスタマーセンターの流用性はあるのかといったテーマを例示いたしましたが、そこでの検討の結果、流用性はあるものの、新規ビジネス分を取り込むことになるし、これを機に、テクノロジーをより活用し、効率化を図ろうという結論になっていた場合に、ファーム側から「我々がコールセンターの要員もお預かりして、業務プロセス、システム共に、最適化を図り、自社で運営されるより、高品質で低コストで運営することをお約束します」といった具合に、コールセンターの組織や業務そのものを引き受けてしまうケースがあり、それがこちらに該当します。

さて、少し前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。

『戦略コンサル』、『総合コンサル』、『ITコンサル』といった、長年、コンサル業界内のプレイヤーを分類するために使われてきた言葉や考えでは、昨今のコンサル業界の実態を表現するのは難しいのではないかとお伝えさせていただきましたが、上述の図1の6つの箱(=あらためて、『戦略』、『マネジメントコンサル/業務コンサル』、『テクノロジーコンサル』、『SI』、『システム運用・保守』、『ビジネスプロセスアウトソーシング』)を塗り絵だとした場合、どの箱をどれぐらい濃く塗っているかで表してみると、各ファームのビジネスモデルが浮き彫りになってくるのではないかと考えています。

左の図2は、どこのファームの塗り絵かお分かりになられるでしょうか?

世界中で約75万人(2013年12月時点)、日本で約25,000人(2024年12月1日時点)を有する世界最大のファームと言って差支えないであろうアクセンチュアです。
当コラム執筆時点で、アクセンチュアには、ビジネスコンサルティング本部、テクノロジー本部、ソング本部、オペレーションズ コンサルティング本部、インダストリーX本部といった5つの本部があり、一部重複こそあるものの、左図の6つの箱をこの5つの本部がきれいにすみわけて担当しています。
6つの箱のビジネスサイズ的なポートフォリオは変化し続けていますが、もう20年以上前から、塗り絵の状況は変わっていません。

最後は、下にある図3です。

こちらは、左右それぞれが、あるファームの10年前ぐらいの塗り絵で、真ん中が両社の現在の塗り絵です。10年前は、異なる塗り絵、つまり、異なるビジネスモデルだった2つのファームが全く一緒とは言いませんが、塗り絵レベルで表現すると、現時点では、ほぼ変わりが無くなっていることをお分かりいただけるかと思います。
転職希望者の方との面談の場では、固有名詞をあげて、それぞれのファームについて説明させていただいておりますが、ここでは、異論反論もあるかと思いますので、固有名詞をあげることは控えさせていただきますが、左がいわゆる『戦略コンサル』に分類されるファームの10年前の塗り絵で、右が監査法人系コンサルティングファームであるBig4の一角を占めるファームの10年前の塗り絵になります。


10年ほど前、左のファームのシニアなマネジメント層の方とお話しさせていただいた際、「我々は、戦略から下流に染み出していっているわけではない。あくまでも、環境変化のスピードが激しくなっている中、戦略も、ウォーターフォールからアジャイルにしていって、クイックに施策を実行の上、検証結果を戦略に即反映していく必要があるので、マネジメントコンサルやテクノロジーコンサルをやっているんだ」とおっしゃっていました。

※ウォーターフォール開発は、上から下に各工程を後戻りしない前提で進めていく手法で、
アジャイル開発は、機能単位で小さくすばやく開発を繰り返していく手法

Big4の中でも、アクセンチュアに近い塗り方のビジネスモデルに舵を切ったファームもございますし、必ずしも、昔ながらの分類で『戦略コンサル』に属するファームとBig4の全てのファームのビジネスモデルが似てきているわけではありません。
今回、お伝えしたいのは、『戦略コンサル』、『総合コンサル』、『ITコンサル』といった、今となっては大雑把な分類に囚われるのではなく、個々のファームのビジネスモデルの変化をきちんと捉え、ご自身がやりたいことを出来る環境を選ばれることが肝要ということで、そのために弊社を使い倒していただきたいということになります。

さらに、勘のいい方はお気付きかと思いますが、例えば、6つの箱の2段目にあたる『マネジメントコンサル/業務コンサル』、『テクノロジーコンサル』であれば、上述のアクセンチュアでも、『戦略コンサル』に分類される図3の左端のファームでも、同じ図3の右端のBig4の一角を占めるファームでも実施しているので、そこをやられたい転職希望者の方であれば、どこでも最適な選択肢になりうるのではないかと思われるのではないでしょうか。
しかし、ここにも落とし穴があり、もう一歩深く、この塗り絵を考察してみますと、比較的多くのファームがビジネスモデル上、守備範囲としている『マネジメントコンサル/業務コンサル』、『テクノロジーコンサル』であっても、その塗り絵の状況次第では、入社後に、「やれると思っていたことが思うようには出来ない」といった後悔につながることがございます。

この続きは、次回のコラムで・・・